Fate二次創作作品『湖の騎士』〜第一話 『巨人の指輪』
※この物語は、タイプ・ムーン作『Fate』の二次創作小説です。本編との関わりは一切ありません。
また、歴史的考証に関わる部分は、全て作者の創作によるものです。これも、事実との関連は一切ありません。
テキストは、ノベルゲームの原稿の形で書かれています。予めご了承下さい。
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警告!
※この物語は、『Fate』のネタバレを含んでいます。それをご了解の上で、お読み下さい。
タイトル『湖の騎士〜第一話『巨人の指輪』〜』
********* 登場人物 *********
ランスロット・・・・『円卓の騎士』。ランサー。
アルトリア(アーサー)・・・・・ブリテンの王子。
マーリン・・・・・ブリテンの宮廷魔術師。ドルイド僧。
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物語は、中世のとある場末の酒場から始まる。
旅の吟遊詩人(バード)が店の片隅で詠っているのは、古代ブリテンの英雄、アーサー王にまつわる叙事詩(サーガ)であった。
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中世のとある酒場の片隅で、一人の名も無き吟遊詩人がリュートを鳴らしていた。
彼が語っているのは、当世、人気の高いブリテン王国の英雄、アーサー王にまつわる伝説だった。
吟遊詩人「─古き時代には、数々のいみじき事が伝えられている」
吟遊詩人「これもその一つ」
吟遊詩人「風渡るロイグリアの大地を駆け抜けた一人の王の物語」
吟遊詩人「今より、それを御身に聞かせよう・・・・・・」
吟遊詩人「ロイグリアの西の海に、今は沈んだ島があった」
吟遊詩人「名をレオノイズ」
吟遊詩人「島の中心には湖あり」
吟遊詩人「妖精の女王が統べる霧深く、竜が棲む神秘の湖なり」
吟遊詩人「湖面は陽の光を受けて水晶の如く煌く」
吟遊詩人「それは、人の心を映す鏡なり」
吟遊詩人「聖なる主、イエス・キリストの聖杯の如く、心と身体を癒す湖なり」
吟遊詩人「その名をアヴァロンと言う・・・・・・・・・・・」
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時は紀元五世紀。
西ローマ帝国の崩壊にともない、ローマ軍の支配が終わりを告げ、大陸からの侵略者を迎えて混乱するロイグリア(現在のイギリス島)。
遠い未来にストーンヘンジと呼ばれる事になる石の神殿のその中で、今、ブリテンの歴史にその名を残す一人の英雄が誕生しようとしていた。
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─ロイグリア
─ソールズベリ平原
─聖霊降誕節(ペンテコスタ)の冬至の日没(※現在のクリスマスごろ)
ロイグリアの南、ソールズベリの丘の草原に、奇妙な岩が並べられた場所があった。
日時計のように円形に並べられたその岩々は、『巨人の指輪』という名前で呼ばれていた。
遠い未来に、ストーンヘンジと呼ばれる事になる、新石器時代の遺跡である。
『巨人の指輪』は、ロイグリアに棲む呪い師たちによって、聖なる儀式を司る神殿として使われて来た。
呪い師たちの名は、ドルイド僧と言う。
ローマ人たちが、ロイグリアを支配する遥か以前から、この地に棲みついて来たシャーマンである。
ドルイドの役割は、神に代って権力者を指名する事である。
それは今も変わらない。
現在、彼らは、ブリトン人の王たちに仕え、王に関わる儀式を司る役目をになっていた。
儀式は、必ず、この岩の神殿で行なわれて来た。
しかも、一年の内、決まった日、決まった時間に。
それが、この日。
主なるキリストの誕生日、聖霊降誕節(ペンテコスタ)の冬至の日没に─である。
ドルイド「間もなく日が沈む」
ドルイド「覚悟はよろしいのだな?竜の子(アルトリア)?」
アルトリア「・・・・・」
ドルイド「今ならまだ引き返せるぞ」
アルトリア「どうやって。私の背後には、儀式の完了を見届けようとしている円卓の騎士たちが取り囲んでいるのだぞ」
アルトリア、と呼ばれた若者が背後の険しい視線を一瞥した。
石の神殿は、櫓上に組まれたサルセン石の巨石と、それより小さいブルーストーン岩から出来ていた。
石の櫓は、天空の星々の象徴であり、神殿の壁の役割を果たしている。
そして、小さな岩は、今は亡き、王の姿を象徴するものだった。
その岩の前に、39人の武装した騎士たちが一人づつ立っていた。
『円卓の騎士』と呼ばれるロイグリアのブリテン王国の騎士たちである。
それぞれが、かつては地方の小国の王、あるいはその子孫であった。
ブリテンは、先代のウーサー・ペンドラゴン王の時代に至るまで、小国を征服する度に、その国の王、
あるいは第一の騎士たちを円卓の騎士の一員として迎え、騎士団を築き上げて来たのだ。
アルトリア「ここで、私が彼らの王になる事をやめるといっても、もう引き下がれない。
彼らも、そしてこの岩の神殿の外で新たな王の誕生を待ち望んでいる兵士たちも私を逃がすまい」
ドルイド「ま、それはそうじゃが、そりゃ、皆、貴方様を男と信じているからじゃ」
ドルイド「ここで上着を脱いで、女の証を見せれば、皆、びっくり仰天。腰を抜かしたスキに逃げられるぞ
・・・・もっとも、その貧乳では、気づかれない可能性もあるが」
アルトリア「(怒!)」
ポカン★
ガーヴェイン「どうなされた、アルトリア王子?!何故、マーリン殿の頭を叩かれたのか?」
円卓の騎士の一人、ノルウェー王、ロトの王子、武勇の誉れ高きガーヴェイン卿が叫んだ。
アルトリア「何でもない。マーリンの頭の上にハエが止っていたので追い払っただけの事」
ガーヴェイン「左様でございますか。それしても、マーリン殿の頭に止るハエとは豪気な者よ。うわっはっは!」
マーリン「いてて・・・・!」
アルトリア「引き返すつもりなど、無い」
アルトリア「私は、ローマ軍が去り、小国が乱立した混乱のロイグリアに平和をもたらす為に王になると誓った。
誰かがやらねばならない事だ。そして、その資格を持つ者は、この目の前の剣を引き抜ける私しかいない─」
そう言うアルトリアの前には、一個の岩に突き刺さった剣があった。
黄金と宝石で飾られた柄には、
─我が名はエスカリバー。王の証なり。
という文句が刻まれていた。
今から二年前。
アルトリアの父、ウーサー・ペンドラゴンが亡くなった時、養子に出ていた王子のアルトリアが王位を継ぐ事になった。
だが、これには反対があった。
当時、アルトリアはまだ15に満たない少年であり、王国をまとめるには早すぎると思われたからだ。
そこで、神託が求められた。
ブリテン王国の一族は、ローマ人の血を引くキリスト教徒である。
そこで、神託は、キリスト教の司祭、プライス司教によって受けられた。
その時、プライスは、天使より、一本の剣を授かった。
剣は、アンティリアと呼ばれるブリテンの南西の海にかつて浮かんでいた島、レオノイズ。
その妖精の棲む湖、アヴァロンで鍛えられた宝剣であった。
剣は、プライスの手によって、石の神殿に置かれた『太陽の石』に突き立てられた。
それが、今、アルトリアの眼前にある岩だ。
キリストの使徒、アリマタヤのヨセフによって、エルサレムの丘からこの場所に運びこまれた、
イエス・キリストの亡骸を横たえた聖なる岩である。
王の証は、この岩に突き立てられた剣を抜ける者にあるのだとされ、
何人もの王位を望む人間が引き抜く事に挑戦したが・・・・今まで、それに成功出来たのは、アルトリアだけだった。
アルトリア「私だけだ。これが出来るのは、やはり私だけ・・・・・!」
マーリン「だからといって、必ず、貴方がそれを引き受ける必要も無いのですぞ」
マーリン「戦乱は戦乱しか呼ばぬ。迷いを持ったまま、簒奪者の道を歩めば、
将来、それが貴方様を苦しめる事になりましょう。
過ぎた道を引き返すような者に、王たる資格は無い。王の命運は、民の命運でもあるのじゃから」
アルトリア「・・・・・必ず、私が王になって後悔するという口ぶりだな、マーリン」
マーリン「そのお優しい気性では、王には向かぬと言っておるのです。キリストの神託など、保護にしてしまえばいい」
アルトリア「我らが主、イエス・キリストの言葉をたがえるか、呪い師(ドルイド)め」
アルトリア「主の他に主はいさまじ。その主が私を選んだのなら、神の道はこの私と共にある。
光り輝くこの剣のように。これが主の栄光を示す物でなくてなんだ」
マーリン「・・・・なら、その栄光を納める鞘を大事になさい。それを手放した時、貴方様の命運も尽きる」
アルトリア「相変わらず思わせぶりな事ばかり言う男だ」
その時、ソールズベリの地平線に、冬至の落日がかかった。
太陽の石と岩の神殿の門柱の隙間に、夕日が落ち、石の神殿の内部はオレンジ色の光と影に満たされた。
アルトリア「・・・・!」
アルトリアの手が、宝剣にかかった。
ローマ人にとって、この冬至の日は、特別な日であった。
イエス・キリストの誕生を祝う聖なる祭りの日であり、それ以前、
ローマがまだエトルリアと呼ばれていた時代から続いてきた太陽の再生を祈願する祭りの日でもあった。
アルトリア「私は王になる」
アルトリア「なって、必ず、このロイグリアに平安の時代を築いて見せる!」
アルトリアは、両手で剣の柄を握り締め、一息に、岩から剣を引き抜いた。
アルトリアが剣を頭上に掲げると、剣は、夕日の光を増幅して、まばゆい閃光を放った。
アルトリア「─今から私の名は、ウーサー王の息子、アーサーだ!」
アーサー「私は、この剣に賭けて誓う!ロイグリアの統一を!!」
円卓の騎士たち「おお!」
円卓の騎士たち「新たな王の誕生だ!」
円卓の騎士たち「彼こそ、我らの救い主(キリスト)だ!」
神殿の外からも、その光は見えた。
兵士たちが、半狂乱になって新たな王の誕生をはやし立てた。
太鼓が鳴り響き、数百頭の祝いの肴である獣を焼くかがり火の爆ぜる音が、
ソールズベリの丘の上に大音響となって木霊していた。
その様子を複雑な思いで見守る一人の円卓の騎士の姿があった。
長髪をなびかせ、長槍を手にした男である。
彼の名はランスロット。
円卓の騎士、随一の武者といわれる槍手(ランサー)である。
彼は、宝剣が生み出された国、レオノイズの王子であった。
アルトリア─いや、アーサーが手にしている剣は、彼の王家に代々伝わる宝であった。
だが、今や、レオノイズは、ブリテンとの戦争に敗れ、そのせいで湖の竜は暴れ、島は沈んだ。
宝剣は、プライス司教の求めに応じて、ブリテン王家の宝として差し出され、
自分はその剣が新たな王を選ぶ様を見せつけられている。
だが─。
ランスロット「─美しい、王だ」
勇ましく宝剣を構えるアーサーの顔を見ていると、その姿に引き込まれていく自分の心に気がつく。
彼の父、ウーサー・ペンドラゴンは、王国を奪った憎き簒奪者であったが、この新たな王は違う。
ランスロット「(父上・・・・私は、あの王に賭けてみたいと思います)」
そう呟いて、ランスロットは、背後のブルーストーン石から離れた。
その岩は─今は失われた彼の王国、レオノイズのメリアダス王の墓石であった。
アーサーは、その後、ブリテン軍を率いて、幾つもの戦いに勝利し、
ブリテンをロイグリア一の王国にしていく事になる。
その戦いの中で、アヴァロンの宝剣は、勝利を約束する剣、『キャリバーン』と呼ばれるようになっていった。
『湖の騎士〜第一話『巨人の指輪』〜おわり』
Fate二次創作作品『湖の騎士』〜第一話 『巨人の指輪』
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